ゴスペル界ではとても有名な、リチャード・スモールウッドさん、という、ゴスペルミュージシャンがおられます。ご自身作詞作曲した楽曲でCDを何枚もリリースしていて、ご自身のクワイヤを持ち、そのクワイヤと共にコンサート活動も精力的に行っています。

彼が作るゴスペル曲は、クラッシックのエッセンスがベースにあり、彼の代表作とも言えると思いますが「Total Praise」という曲はとても有名で、日本でもたくさんのクワイヤが歌っていますよね。

彼の楽曲はそのコーラスワークや、ご自身が弾かれるピアノの美しいメロディアスな旋律が印象に残る曲ばかりです。

 

ニュージャージーの教会で行われたワークショップ

実は私、5年ほど前になりますでしょうか、そのリチャードさんの指導するゴスペルのワークショップに参加したことがあります。場所はニュージャージーにある教会で、バスを乗り継いで、かなりの時間をかけてやっと教会にたどり着いた覚えがあります。3日間ほどの期間で、最後の日にはコンサート、というスケジュールでした。

彼のワークショップは常に、彼のお付きのミュージシャンがいました、その中にはピアニストも含まれます。ご本人がずっとピアノを演奏しつつ教えるのか、と思ったら、そうではないのですね。

そして、そのピアニストの人は、ワークショップ中、どんな時もず〜っとピアノを即興で弾いていまして、そんなピアノ演奏が流れる中で、彼はいろいろな話をして、話をしつつ曲を指導する、というスタイルでした。その話しの内容によって、また話の流れによってピアノが即興で演奏されているわけです。もちろん譜面なんか使いません。それもとても自然な流れで、私たち会衆をほどよくリラックスさせてくれ、また集中させてくれましたね。

 

ゴスペルは決まり事がなく、その場のスピリット次第

こういったスタイル、というか、その場の雰囲気の流れに任せる、というようなやり方は、黒人教会の牧師がメッセージする際にもよく見られることなんです。

ここまでずっと伴奏が流れているわけではありませんが、例えば、礼拝でされるメッセージが、いよいよ終盤に近づき、盛り上がってきて、口調もかなり激しく、白熱してくると、すかさず、オルガンやバンドの演奏がそのメッセージをさらに盛り上げるがごとくに、合いの手を入れる感じで、♫ジャーン!と演奏します。そのタイミングは絶妙で、まるで何かのコンサートを聞いているような雰囲気です。

牧師のメッセージも、バンドの音が入って来るとだんだんメロディーをおびてくるようになり、さらに会衆もそれに乗っかってどんどん盛り上がります。

(聞いた話では、その牧師によってキーが決まっているんだそうですが)

やはり、彼らの文化である音楽とリズム、というのは、今でもしっかり教会に根付いている、なくてはならない要素なんですね。

もちろん全ての黒人教会がそうだ、というわけではありませんが、よくよく頻繁に見られる光景です。感じたままを素直に声にからだに表現できる彼らの文化、カルチャーゆえ、なのかもしれませんね。

 

自然発生的に歌いだしたTotal Praiseに涙。。

さて、リチャードさんのワークショップの話に戻りますが、そのワークショップでは、最初にご紹介した、彼の超有名な曲であるTotal Praiseは課題曲ではなかったんですが、

しかしあまりにも有名な曲で、特に黒人教会の中では定番中の定番、誰でも知っている曲なので、何かの話の流れで、いきなりこの曲が始まり、全員で歌い始めました。。この曲を知っていた私ももちろん歌いました。

あまりにも自然な流れで、しかも作者本人の指揮でこの曲を歌う、という、あまりにも光栄な出来事に、私は涙を止めることができませんでした。。歌詞の言葉の力強い内容、そして最後に、その歌詞に呼応するように歌われる、アーメン、アーメンというコーラス(アーメンとは、そのとおり、同意しますの意味)に、今までそのワークショップに不安になりながらもバスに揺られながら通った思い、日本人たったひとりでその会場にいる、という孤独感、周りの人たちとなかなかうまくいかないコミュニケーションなど、それまでのストレスが全て報われたような思いがしました。

今でも最後のアーメンコーラスは、心のなかで響いています。