複数の人数、ある程度のまとまったグループで歌うのは、合唱という方が馴染みのある方も多いかと思います、が、

20年以上も前になるでしょうか、日本でヒットした映画「天使にラブソングを」あたりからゴスペルが日本に流行り始めて、今ではブームこそ落ち着きましたが、未だにゴスペルを歌う人がたくさん存在している、根強い人気を誇る音楽です。

私はそのゴスペルを指導する講師をしてだいたい20年ぐらいになります。

 

ゴスペルとは何か

ゴスペル・・といえば、ゴスペラーズ、を思い浮かべる方が多いでしょうか。または何か音楽の種類と考えている方も多いかと思います。もちろん、音楽の種類としてゴスペル・ミュージックはあります。

しかし、もともとのゴスペル、という本来の意味は、日本語に訳すと福音(ふくいん)、英語でGood Newsという意味です。ゴスペル、GOSPELという言葉自体、GOD SPELLが合わさって生まれた言葉で、神の言葉、つまり、神の言葉の書かれた聖書に基づいた福音、という意味になります。

聖書には新約聖書と旧約聖書がありますが、この新約聖書の中の、特にイエスの生涯ついて書かれた4つの書物、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4つが福音書とされていて、英語ではGospel、例えばGospel of Matthew(マタイの福音書の意味)、という風にこの言葉が使われています。

ゴスペル・ミュージックが日本で有名になったのは、やはり映画「天使にラブソングを」のヒットが大きなきっかけになったと思われれます。映画で出てきたような、聖歌隊(英語でクワイヤ)の形態で歌われるゴスペルもあれば、ソロで歌うゴスペルもありますし、ジャンルもいろいろ、ブラック・ミュージックを始め、ポップ、ロック、カントリー、ラップ、ジャズ、クラッシックなど、さまざまな形でゴスペルが演奏され歌われています。

ということで、聖書の言葉、聖書で言われている神、キリスト教がもとにある教え、愛、信仰、救いなどを含めた内容を歌っている曲をゴスペル・ミュージック、とひとくくりで呼ぶことができると思います。

 

どうしてゴスペルが日本にここまで根付いたのか

実は、キリスト教でない人がゴスペルを歌う、という状況は、日本独特のことで、他の国々ではあまり見られない状況なんですね。内容が内容なだけに、クリスチャンではない人があえてゴスペルを歌う、というのは、一般的ではないことなんです。

それが、ここ日本ではここまで市民権を得ている、ということは、さまざまな理由があると思います。

まず、歌うゴスペルの曲自体がもともとアメリカなどからの輸入された曲であることが多いために、そういった場合は英語で歌うことになります。英語で歌うことによって、歌詞の意味はダイレクトには歌い手には伝わらないために、深く考えないで歌えます。

また、日本の文化がもともと、八百万の神々を信じる文化なので、誰でもなんとなく神様の存在は信じている、それを具体的に一つとするのには抵抗があるけれど、全て神様は一緒!みたいな考え方が一般的なんじゃないでしょうか。キリスト教も仏教も神道も、神様は神様、というような感覚であれば、あまり抵抗なくゴスペルも歌えるのかな、と思います。

クワイヤ形式で歌うことによって、ひとりじゃない、大人数で歌うことの醍醐味があります。周りの声に自分の声が適度に隠されながら歌い、そこで得られる安心感、リラックスしつつ、英語の歌詞を、そしてかっこいいリズムに乗って、からだを動かしながらかっこいいハーモニーで歌うのは楽しいものですよね。

また、全体のクオリティーがどんどん上がってくれば、クワイヤ全体が一つの声にまとまってくるのです。その一致した時の感動は、それは素晴らしいです、一人で歌うときには味わうことができません。

 

また、ゴスペルを歌う場を設けているのが、教会ももちろんありますが、教会以外の、一般のミュージックスクールやお習い事の枠で行われている方が多くを占めていると思います。そのこともゴスペルに対する敷居を低くしている事の一つだとも考えられますね。